2020年02月20日

植物をエタノールにつけたものを蒸留すると…

今日は、ご質問にお答えします。先日こんな内容のメールいただきました。
「焼酎などのお酒に植物を漬け込んで、香りを取り出し、それを蒸留すれば、精油を効率良く集めることができるのではありませんか」
メールのお答えになるかわかりませんが、チンキの蒸留について考えていきましょう。


1 ハーブのアルコール漬は「チンキ」

 

はじめに、ハーブのアルコール漬のことをチンキと言います。薬草をエタノールにつけて、薬効成分を取り出したり、バニラービーンズをエタノールにつけて、バニラエッセンスを作ったりあど、私たちは、チンキを有効活用しています。


このご質問では、エタノールでチンキをつくって、それを蒸留してよう、ということだと思います。実は、精油成分は、エタノールにどんどん溶けていますので、チンキを蒸留して得られるものも、実はチンキです。


私自身、チンキを作ることには興味ありますが、まだやったことはありません。チンキを蒸留しても結局チンキなので、蒸留については、これまでやってみようとは思いませんでした。実際にやってみたら、何か面白い結果が待っているかもしれませんね。


2 蒸留酒の香りについて考えてみよう


日本酒やワインなど、穀物や果実などの糖分を発酵させて作ったお酒を醸造酒といいます。それらの醸造酒を蒸留したものが、焼酎やブランデーなどの蒸留酒です。チンキを蒸留するというのは、これら蒸留酒を作る過程と似ていますね。


焼酎は米麹や麦糀の香りがします。


  1. ウイスキーなどは、パン酵母の発酵臭と同じような香りがします。
  2. ブランデーなどは、寝かすときの樽の香がします。

でも、お酒の匂いを香水にしたり、ルームスプレーにしたりしようとは誰も思いませんよね。お酒の香りがする人がいたら、ちょっと印象悪いですよね。(笑)


私が、チンキ蒸留をやるとしたら、酒類を使うのではなく、高純度のエタノールか、水と混ぜたものを使うと思います。(やるかどうかはわかりませんが)


3 精油成分は、エタノールに溶ける


水蒸気蒸留がよく行われるのは、比較的に簡便にできるからです。集めた水蒸気を冷やせば、芳香蒸留水となり、その水面にうっすらと精油が浮かびます。しかし、もしこれをアルコール溶液でやったらどうなるでしょう。やってみたことはないのですが、普通に考えて、精油を取り出すことは不可能です。


ほとんどの精油成分は、水には不溶です。なので、精油は芳香蒸留水と混ざることなく、水面に浮くのです。しかし、精油は、エタノールには可溶です。どんどん溶けてしまうのです。精油類を一度エタノールと混ぜてしまうと、そのあと、精油だけを取り出すことは大変難しくなります。


「蒸留で、精油とエタノールを分ければよいのでは?」というご意見も聞こえてきそうです。しかし、ほとんどの精油類の沸点は、エタノールの沸点に近いのです。そういったことからも、精油を一度でもエタノールに混ぜてしまうと、精油成分だを取り出すことは、大変難しいのです。


4 チンキを作っていろいろ使おう


以上のことから、ハーブチンキを作ったら、そこから精油を取り出すことを考えるのではなく、チンキのまま使った方がよろしいと思います。アオジソやバジルのチンキを作って、パスタに合わせるとか、ローズマリーのチンキをチキンのソテーに合わせるなど、食品の香付けに使う用途は広がりそうで楽しいですね。


チンキなんて今まで料理に使ったことないよ、という方もいるかもしれませんが、バニラエッセンスはまさに、バニラビーンズのチンキなのです。オレンジの皮など、水蒸気蒸留で取り出しにくい香りのものは、チンキを作ってりようするとよいかもしれません。オレンジの香りただよう、シフォンケーキとか、素敵ですね。お腹がすいてきました。


以上、一本のメールから楽しく考えられました。メールをくださったHさん。ありがとうございました。





Posted by R精油の会 at 00:00│Comments(0)
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